ライターという職業柄、音声を録音する機会は多いです。
インタビューはもちろんのこと、記者発表会での登壇者のコメントや、囲み取材など、あらゆる場面で音声を録音しています。
録音した音声は後から聞き返す場合もあるし、そうでない場合もあるのですが、記事を正確に書くための保険的な意味で、とりあえず何でも録音しておくことが多いのです。
しかし、実は最近、録音ではなく「録画」しておくことが個人的に増えています。機材はデジカメだったり、時にはiPhoneだったりと様々ですが、録音ではなく録画しておいたことで助かる場面がけっこうあるのです。
たとえば、座談会など複数人にインタビューするときです。たいていのインタビューは、初対面の人に話を聞くことになるので、顔と声がなかなか一致しません。1対1か、せいぜい1対2のインタビューならそれでもいいのですが、相手が3人以上になってくると、後から録音を聞き直しても「あれ、この声は誰だっけ?」と困ってしまうことが多いのです。たぶん、近い仕事をしたことがある方なら、全力で頷いていただけるはず。
そこで「録画」の出番です。
ミニ三脚をつけて、全員が映る場所にカメラをセットします。あとは座談会の間、ずっと録画するだけ。こうすることで、「誰の発言なのか」がはっきりわかりますから、後から顔と声が一致しないということはなくなります。また、動画なら話し方や表情まで記録できるので、より当日の雰囲気を思い出すことができます。
ポイントは、なるべく広い角度で撮れるデジカメかビデオカメラを用意すること。レンズ交換式であれば広角レンズを一つ用意しておくと便利です。緊急時ならスマートフォンでもいいのですが、狭い部屋で大人数の場合、スマートフォンの画角では収まりきらないことがありますからね。
また、僕はデジカメの内蔵マイクでそのまま音を拾っていますが、ボイスレコーダーに比べると、やはりデジカメの録音レベルは低めですので、雑音が多い環境などで録画する場合は外付けのガンマイクなどを使うといいでしょう。集音能力が段違いになりますので、後から聞き返すのが楽になります。
もうひとつ、録画しておくことのメリットがあります。
それは、いざとなったら動画から写真を切り出せること。
取材ではデジカメを持参して写真を撮ることが多いのですが、慣れていないと決定的瞬間を見逃してしまうこともあります。そんなとき、動画を撮影しておけば、後からゆっくりと欲しい場面をキャプチャすることができるというわけです。
もちろん、写真として撮影するよりも画質は落ちてしまいます。デジカメの画素数は最近では1600万画素超が当たり前ですが、動画だとフルHDでも200万画素。切り出した写真の精細感は、さすがにデジカメで撮った写真には及びません。
ただし、逆にいえば200万画素はあるので、ウェブの記事など、あまり大きく写真を使わない場合は十分に使えます。さすがに雑誌では厳しいのですが、それでもページのどこかに小さく使う程度なら問題ありません。それよりも重要なのは「ちゃんと必要な場面が撮れているか」ですから、録画しておくメリットは大きいと感じています。
ついでにいうと、最近は4K解像度で録画できるデジカメも増えてきました。4Kというと800万画素以上ですから、これはもう写真として切り出しても十分なクオリティを保てることになります。録画時間の制約があったり、メモリーカードの容量を大量に消費したりするので、長時間の取材でずっと回しているわけにはいかないのですが、今後4Kが普及してくれば、いよいよ取材でも「動画メイン」の時代がやってくるのかもしれませんね。
今回はライターとしての仕事における録画の便利さについて語りましたが、大勢で会議するときの議事録や、家族でイベントへ参加したときの記録など、日常生活の中でも同じような状況になることはあるかと思います。
そんなときは写真や録音だけでなく、その二つの良い部分を併せ持った「録画」という手段をぜひ検討してみてください。
(山田井ユウキ)
フリーライター/コラムニスト。専門分野はIT、エンタメ、サブカルチャー、ニコニコ動画など。 MacFan、PASH!、フルールでコラムを連載する他、 FM西東京番組「Nちゃんねる(仮)」に月1レギュラー出演中。 著書に「サイバー戦争」(マイナビ新書)など。 個人運営のブログ「カフェオレ・ライター」(http://coffeewriter.com/)は累計アクセス8,000万超。 Twitter:cafewriter